肌寒くなり始め、屋上に出入りする人もまばらになった近頃。そんな中訪れた小春日和、これは屋上に行くしかないと昼休みを利用して友人たちとお昼ご飯を食べ、そして1人だけ残りそのままエスケープ。だってこんなお昼寝日和に授業なんて野暮なことこの上ないではないか。そんなことを独りごちながら昼寝のベストポジション――給水塔横に登り、おやすみなさい。最近赤也に貸してもらったゲームについつい熱中してしまった寝不足が続いていた体に、そよそよと吹く風が心地よくすぐに夢の世界へと旅立った。


「んぅ……ふっ……」

授業中で自分以外誰もいないはずなのに微かに聞こえる声にあたしの意識は浮かんでいく。あたしの安眠を妨害する奴は誰だ!!なんて、眠たい目を擦りながら辺りを見回しても誰かがいるようには見えなかった。しかし徐々に覚醒する頭はまどろみの中で聞こえた声を拾った。

「あ……やっ……せんぱ、ぃ……!」
「だーめじゃ。これはあげれんのう……その代わり責任を持って天国を見せちゃる」
「ふ、あっ!!!」

余裕のない声を上げる少女と正反対な少年。もちろんその独特のしゃべり方だけ誰かを特定することなんて簡単なことだけど、その声色だけでどんな表情をしているのかも想像出来てしまい、思わず胸の奥がきゅっとした。それでもあたしの大事な安眠を妨害したことに変わりはなく、そっと下を覗くと、思った通りの光景が目に映る。彼女達が屋上を出て行くまでここから動けないことに小さく溜息を吐くと顔を引っ込めた。
しばらくしていると一通り事が終わったのか普段のトーンに戻った少女が「あの、先輩……」と声を発したが、彼はそれに「約束は守ったじゃろ?……俺はもう少しここに居る、お前さんは授業に戻りんしゃい」と、ぴしゃりと言い放った。少女は小さく「……ありがとうございました」と言って屋上を後にしたのだった。あたしはその様子を眺め、音を立てないように階段を降り彼に近付いた。

「こら、仁王雅治!」
「……何じゃ、か」

ごろんと寝転んでいる彼の隣で腕を組んで仁王立ちして見下ろす。普段見下ろすことなんて出来ないからこういう機会はどこか嬉しくて自然と口角が上がる。そんなあたしを意にも介せず雅治は横目でちらりとあたしを見てはまた目を瞑る。そんな様子に小さく溜息を付いて、先ほどのことを咎めた。

「あんたまたサボって女の子泣かしたのね」
「さぁ、なんのことか。そもそもサボっとるんはお前さんも一緒じゃろ」
「こんな晴れの日に授業とか野暮だわ」
「俺もそんなとこじゃ」
「そんなんで誤魔化そうとしたって無駄だからね?……その気ないなら抱いてあげることなんかないのに、」
「……あっちがそう頼んで来よったけぇ俺の所為じゃなか」

そう言って雅治は上体を起こすとあたしの腕を引いた。不意の出来事にあたしの身体はぐらりと傾き、彼へとダイブ。わっ、と声を上げてたどり着いた先に彼の匂いに混じってさっきの少女が香って思わずむっと顔を顰めた。あたしをその膝に乗せてにやりとしながら雅治はあたしの顰め面に唇を寄せて笑う。いつもより居心地の悪い彼の腕の中でちゅっちゅと響く音とやわらかな感触に身を捩りながらそんな彼にまた顔が歪んでいく。

「っん、雅治いい加減にしてよ……」
「妬いてるなんぞ滅多にお目にかかれんからのう」
「別に妬いてなんか!」
「ほう……。じゃあ、この膨れてる頬は何じゃ?」

雅治はそう言うと長い指であたしの頬をつん、と突いて耳元で「、素直になりんしゃい」と囁いた。急に響いた低音にドキリと鼓動が跳ねる。――そうよ。あたしだけの空間にあの少女がいることが面白くなかった。でもそれと同時に優越感も抱いた。……だってこの詐欺師がその手で抱くのはあたし一人なんだから。
これ以上顔を見られるのは御免だとあたしは彼の胸に顔を埋めた。そんな様子に彼はくつくつ笑う。それもまた面白くないけれどきゅっと回る腕に、そっと背中を撫でる手に安心した。

「まさはる」
「……何じゃ」
「何でもない」

居心地の悪かった雅治の腕の中はいつのまにかいつも通りの居心地の良さだった。その心地良さにまた夢うつつになりかけてたが、不意に襲った刺激に意識が戻ってくる。その正体は雅治の指だった。背中に回っていた手が太もも辺りを撫で擦っていたのだ。

「んん……ちょっと雅治、っ」
「んー?」
「『んー?』じゃなくて!あん……何してんの、よ」
補給じゃ。……お前さんじゃなきゃ物足りん」
「あっ、んん……ばかぁ」
「何とでも言いんしゃい」

我慢出来ないと言わんばかりに唇を奪われる。ちゅ、ちゅっと啄むような口付けを繰り返して、巧みな舌が歯列をなぞり口腔に入り込む。奥にある舌を絡め取られ、何度も角度を変えて、深く深く。溢れた唾液は薄く開いた唇の隙間から絶え間なく零れ落ちる。その間にも彼の細長い指は太ももを上がり、スカートを捲ってその奥――敏感な泉に伸びた。

「びしょ濡れじゃの、
「っ!あん、……ばっ、!!んぅ」
「俺がこの手で抱きたいと思うのはだけじゃ」
「うん……」
02. 愛してるよプシュケ

'12/12
title by 確かに恋だった

遅くなって申し訳ございません!!(スライディング土下座)
リクエスト企画第2弾の仁王です。
微エロの境界線が迷子状態ですみません。

ユズキ様のみお持ち帰り可能。報告不要。
HP掲載時にはサイト名明記お願いします。

*何かあればどうぞ

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