何があったかは知らないが今日のあの子の荒れ方と言ったら相当のものだった。


その晩、は唐突に私の部屋を訪ねてきた。よくもまぁ堂々と男子寮へと来れたものね、なんて他人事のように思いながら彼女を部屋に招き入れる。

「こんな時間に訪ねてきて、一体何の用?」
「……」
「ちょっと。アンタ人の話聞いてる?」
「……ん」
「まったく……夜更かしはお肌によくないのに」

ぶつぶつ文句を言いながらベッドに腰を掛けると彼女は私の脚にもたれ掛かるように座ってくる。何となくわかった気がした、がこうやって無言で甘えてくる時は大体何かやらかした後だ。しかし私はフォローを簡単にするような人間じゃない、そういう性分だ。甘くて優しい言葉なんて私の辞書にはないもの。それを理解しておきながらもなお彼女はこうやって来る。
仕方ないから膝に乗っている彼女の頭を撫でてやる。するとは嬉しそうに、だけど今にも泣き出しそうな顔で笑う。
……ここまでこいつにほだされるとは思ってなかったな、と心の中で毒づくと足元にいる彼女を抱き上げて自分の膝の上に乗せるとアルコール独特の匂いが鼻を掠める。溜息を零して腕の中にいる彼女の目を見れば明らかに酔っているのがわかる。

「……お前酒飲んだろ?」
「ん、ん……」
「はぁ……」

俺の問いに首を振り力なく答える。酩酊もいいところだ。仕方なく俺は腕の中の彼女を抱き上げてベッドに横たえさせると少し離れた所にある冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出しにベッドを離れる。
ボトルを彼女の方へ放り投げれば、彼女は持っているはずのない缶を手にしていた。ぎょっとしてからそれを取り上げその代わりにボトルを渡して飲むように促す。

「おまっ、それどこから出してきやがった」
「んー、ルイがいつもそこのたなにー、チューハイかくしてるのあたししってるしー?」

呂律が回らず舌っ足らずの子どものようにしゃべるを見て俺は思わず深い溜息を零す。
ふと思い返せば前回危力系のメンツで飲み会をしたのは俺の部屋だった。高等部生の俺と八雲と、中等部生の颯とのばらの五人で。本来中等部生である颯とのばらは予定にはなかったのだが颯がのばらを連れてに懇願したとかで俺の部屋に来た時のあいつの顔ときたら何とも言えないほど困り果てたものだった、今思い出しても笑えるけど。
その時自分が飲む分の酒をが言う棚から出した覚えがある。

……アイツ覚えてたのかよ。
頭を抱えながら目の前にいる彼女を見ればボトルの水が減っていない。俺は本日何度目かわからない溜息を付くとその手からボトルを抜き、自分の手の中に収めるとキャップを捻り水を一口流し込む。

「自分で水飲めねぇなら俺が飲ましてやるけど……どうすんだ?」
「んー」

いまだにぼけぇといているを見て本当に溜息しか出てこない自分がいることに半分嫌気が差してきて、水をもう一口含むとそのまま綺麗な紅に口付けて水を流し込んだ。全て流し込み終わり、少し名残惜しい気持ちを抑えながら顔を離せば惚け顔の

「……ねぇ、ルイ」
「あ?」
「あつい」
「酒飲みすぎだろ……」
「ねぇ、あついってばぁ!」
「お前が勝手に酒飲むからだろ?」
「うぅー」

そうこうしているうちにが泣き出した。
だから酔ったの相手をするのは嫌なんだっつーの。
俺は心の中で軽く毒づいての傍に腰掛ける。ふぅ、と溜息を零し、彼女の髪をくしゃりと撫でればすすり泣いている彼女が顔を上げる。

「……で、今日は一体何をやらかしたわけ?」
「っ、べつに……」
「別にって顔してないじゃない」
「……」
「誰にも言わないし、笑いもしないから正直に言っちゃいなさい。……元々その為にここ来たんでしょ?」
「……今日のしっぱいは、」
「ん」
「絶対棗の所為なのに、ペルソナったらぜんぶ、っ……わたしの所為にするんだもの」
「いつものことじゃない」
「そ、だけど……」
「気にするなんてアンタらしくないわよ?」
「……っ」
「……まぁ、らしいっちゃらしいけど」
「ね、ルイ」
「なに?」
「……ありが、と」

彼女の言葉と共にボスンという音がしたから見てみれば、疲れたのか寝てしまったがいた。その頬には涙の筋、目には大粒の涙がきらりと輝いている。
そんな彼女の様子を見て自然と口元が綻びるのが自分でもわかる。その瞬間ふと、あることを思いついた。それからしばらくして自分も床に就く。


翌朝――。

「……んっ。え、……きゃあぁぁぁぁ!!」
「……んだよ、朝っぱらから」
「ちょっ、何でルイがいるのよー?!」
「何でって俺の部屋だからに決まってるだろ」
「へ?……っぎゃ!何で私下着だけなの?!って、見ないでよ馬鹿!」
「今更隠すことねぇだろ」
「ちょっ、どうしてルイも裸なわけ?!なに、どういうことよ……これ」
「そーゆー格好の男女がすることって云ったら一つしかないだろ?」
「そういえば喉も痛いし声も掠れて……って、はぁ?!嘘でしょ?何かの冗談よね?ルイ!」
「昨日の激しかったなぁ……」
「え、ちょっ!」
「ずっと啼いてたし」
「嘘でしょ……」
「お前いい声で啼きす「ぎゃあぁ!もう言わなくていいっ!!!!」
04.純愛エゴイスト

'09/10

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