青く澄んだ空 遠くまで響く 鐘の音色
純白に身を包み歩く 紅い乙女の道
十字架の前で誓う 永久の愛

そんな六月の花嫁に憧れていたのは遠い昔の話で。



先日天気予報では梅雨入りを発表したところだというのに今日は空一面雲もなく快晴、絶好の結婚式日和だ。……結婚式日和だとか柄じゃないが考えてしまう辺りやはり自分もこの式――みんなが作り上げてくれた大切なこの日をとても楽しみにしていたんだ、と実感する。そんなことを一人考えていると部屋の扉をノックする音と共に親友の声が聞こえた。

「美咲、準備出来たー?」
「おー、ユーリ!」
「わぁ!美咲先輩、メッチャ綺麗やわぁ!」

親友のユーリ、それから先輩や友人、後輩が一緒に部屋を訪ねてきたのだ。
みんながみんな口々に『綺麗』だとか『似合ってる』と言ってくれるのだがその言葉が何だかくすぐったくて気恥ずかしい。そもそも昔から女の子っぽい服装なんかあまりしたことがないから落ち着かない。むしろ正装した蜜柑を始めとした後輩ズのみんなの方が私なんかよりもずっと綺麗に――可愛く見える。
そうこうしている間にも部屋に人が集まって来て何だか部屋が騒がしくなってきた。

「おーい、美咲いるかー?」
「……殿」
「おっ!綺麗になって……お父さんは嬉しいぞ!」
「あ゛ぁ?誰がお父さんだってー?」
「あー、俺が悪かった。だから花嫁がそんな口利くなよ」
「わかればよろしい」
「……あ、そうそう」
「なに?」
「そろそろ時間だってよ」
「……ん」
「美咲」
「もー、なに?」
「結婚おめでとう」
「……、ありがと」
「ほら、お前ら行くぞ」
『はーい』

殿はそう言ってみんなを連れて部屋を出て行く。残された私は係りの人と部屋を後にする。



「新郎 安藤翼。汝はこの女子と結ばれ、神の運命に従いて、汝その健やかなる時も病める時も、これを愛し、これを敬い、これを慰めることを誓いますか? 」
「誓います」
「新婦 原田美咲。汝はこの男子と結ばれ、神の運命に従いて、汝その健やかなる時も病める時も、これを愛し、これを敬い、これを慰めることを誓いますか? 」
「誓います」

チャペルに見立てた講堂に彼と私、多くの人が集まった。これだけ多くの人に囲まれて結婚式を挙げられる私達はやはり幸せなんだ、と改めて実感する。
ベールを上げる終えたのか彼の手が私の頭上から下りてきて、そっと耳元で何かを囁いてからチュッと口付けられる。


この学園に来て嫌なこともあった、ここから逃げたいとも思った。
でも翼に、大切な仲間に出会えた。本物の家族みたいにあったかい気持ちになれる最高の仲間に出会えることが出来た。

お父さん、お母さん。
今何をしていますか?
元気にしていますか?
私は今日――この世に生れ落ちた日に、大切な人と結婚します。


「ねぇ、翼。……好きになってくれてありがとう」
「そりゃ俺の方こそ。……なぁ、美咲」
「ん?」
「これからもずっと一緒にいような」
「うん」
June bride

'09/06