コン、コン
「……翼、入るよ?」
「あぁ」
クリスマスパーティの夜、何の前触れもなく美咲が部屋に来た。
美咲が前触れなく部屋に来ることはそう珍しいことでもないから俺は気にせず彼女を部屋に入れる。
が、部屋に入ってきた美咲に俺の目が止まった。
「おま、着替えて来なかったのかよ……」
彼女はパーティーの時に来ていたワンピース型ドレスのままだった。
こっちは礼装なんて堅苦しくて部屋に戻った瞬間、脱いだというのに。
パーティーではあまり気に留めていなかったのだが、普段は制服で隠れてしまっている身体のラインがそれの所為で浮き出ていた。
こう改めて見ると何だか変な気分で思わず目を逸らす。
「あー。何か面倒だったからそのままにした」
俺の気も知らず美咲は何とも彼女らしい言葉を並べながらベッドに腰掛けてくる。
「……寒くねぇの?」
「寒いけど、暖房入ってるからいいかなぁーっと」
舌をべっと出して笑う美咲に俺は苦笑しながら彼女の隣に座り、背中をベッドに預けた。
「そうかよ。……つーか、何か疲れたな」
「わかるわぁ」
「立食パーティって結構疲れんだよな。その後、踊るしよ」
「それだよ。ダンスとかいらないっつーの。……あ、翼」
不意に美咲が俺の名前を口にする。
何かと思い、目線だけを彼女の方へと向ける。
「ん?」
「これ、あげる」
美咲はどこからともなく小さな袋を出してきて、それを俺に向かって投げて寄越した。
顔面手前でキャッチすれば、少し硬い感触。
……顔に直撃してたら痛かっただろうな、この感触は。
「……何だよ、これ」
「開ければ分かる」
彼女がそう言うから俺は上半身を起こし、袋を開けて中身を確認する。
中から出てきたのはシンプルだが華のあるシルバーアクセサリーだった。
「あ……」
「メリークリスマス!」
「サンキュー、美咲。って、わりぃ。俺何も用意してねぇんだわ」
「や、別にいいよ。それこの前セントラルタウンでたまたま見つけて翼に似合うだろうな、って思っただけだから」
そう笑う美咲の顔を見た俺はちょっとした悪戯心が芽生えて、少しだけ口角を上げて彼女に声をかける。
「なぁ、美咲。今、とっておきのプレゼント思いついたんだけど、」
「……なに?」
ゆっくりと俺の方へ振り返る彼女の唇に自分のそれを重ねる。
美咲はいきなりのことに驚いて、離れようと抵抗するが指で美咲の顎を固定している為に彼女の抵抗は意味をなさない。
空いていた手で彼女の肩口を押し、ベッドへとダイビング。
「っや、ンン……、ぷはっ!いきなり、何すんだよっ!」
突然のことに悪態をつく。それにも拘らず俺は上機嫌。
潤んだ目に上気した頬。
うん、いい眺め。
「だからクリスマスプレゼントって言っただろ?」
「……優しくしろよ」
「はいはい、分かりましたよ。お姫様」
Long night
'09/12