「ねぇ、赤也。愛して?」
「はぁ?」

ズイっと顔を近付けて私は赤也にそう言った。いきなりのことに彼は困惑したのか驚いたのか目を見開きこちらをまじまじと見ている。頬がほんのり赤く染まっているところを見ると少し照れているようだ。私はそんな彼を見てクスっと笑い彼の首に腕を回しもう一度同じ台詞を耳元で囁いた。

「ちょっ、!いきなりどうしたんだよ!?」
「別にー。ねぇ、愛してよ」
「いや、……ほらっ……なっ?」
「あーかやー」
「あ゛ー、もう!お前マジどうしたんだよ?!」

赤也は私の腕を押しながら抵抗の意を表した。でもその瞳が心の底から嫌がっていないことを気付いてるのかな?
アタシはまだ煮え切らない彼を試すようにまた囁く。

「ねぇ、赤也。愛してよ……」
「……そんなにしたいのかよ?」

腕を押していたその手でアタシの手首をグッと掴んだ赤也。顔を上げて見れば、普段とは違う顔を覗かせている。

「アタシ『したい』なんて一言も言ってない」
「でも『愛して』って言ったじゃねぇか」
「愛しては欲しいけど、そういう行為がしたいなんて思ってないもん」
「……じゃあ何なんだよ」
「ただ、“愛してる”の言葉が欲しいだけ」
「あれだけじゃ足りないってか?」
「……もっと欲しくなる時もあるのよ」
「お前欲張りだよなぁ」
「悪かったわね」

アタシがそう言うと赤也はアタシの耳たぶを甘噛みし、そっと耳元でアタシの求めている言葉を囁く。

……愛してるぜ」
「やっ、……もっと」
「愛してる」
「もっと……」
「愛してる。……本気で愛してるから」
「ん……もっと言って」
「まだ足りねぇの?」
「うん。もっともっと欲しいよ」

アタシがそうやって見上げれば優しく笑う彼の顔。赤也はアタシの首元に顔を埋めそっと舌で辿り舐め上げる。そして耳に辿り着きまた囁いた。

「愛してる。……愛してるぜ、
「もっと」
「愛してる、愛してる……愛してる」
「……もっとぉ」
「今日はどこまでも甘えん坊なのな。……愛してる」



『愛してる』のその言葉をから要求された。いつも俺が言っても恥ずかしがって「言わないで」と言う彼女なのに。今日は違う、言っても言っても足りないとまるで小さい子供のようにせがんでくる。

「愛してる。本当に愛してる」

何回目の『愛してる』か分からないけど俺がまたそう囁いたら彼女は満足そうな顔で俺を見上げ微笑んだ。そして――チュっと小さく音を立てて口付けをしてきた。

「……満足か?」
「うん。ありがとね、赤也。……アタシも愛してるよ」

そう言う彼女が可愛くて愛おしくて……。
俺はの顎を少し持ち上げ、口付けをした。唇を離せば彼女は不思議そうな顔をしてみせた。

「……赤也?」
「なぁ、。俺にも言ってよ」
「へ?」
「『愛してる』って言って」
「やだ……」
「人には散々言わせておいてはそれはずりぃだろー?」
「そんなのっ……恥ずかしくて言えないよ」
「いいじゃん、ここに俺とお前しかいねぇんだし」
「……っ、……あいしてる、よ」
「聞こえねぇ」
「……あいしてる」
「もう一回」
「……愛してるよ、赤也」

は余程恥ずかしかったのかそう言い終るとふいと真っ赤な顔を逸らし俯く。

「なぁ、
「……ん?」
「言葉よりはっきりと愛を確かめる方法あるって知ってたか?」
「え?……んっ」



君が望むなら、何度でも言おう。――ただ、愛してる。
い囁き

'09/03