「ブン太先輩。……私の彼氏になって頂けませんか?」
「……はぁ?」
二年の教室でしゃべっていたの口から突然そんな台詞が飛び出してきた。
俺はビックリしての顔を見たが彼女は至って真面目な顔をして俺を見ている。
「……お前、今何て言った?」
「だから私の彼氏になって下さい、って」
「いやいや、お前彼氏いるだろぃ!もうすぐ2年になるさ」
「えー、先輩、彼氏になってくれないんですかー?」
「『えー』じゃねぇ!!……って、俺の話を無視すんな!」
「……ぶぅ」
「だってお前彼氏いるだろぃ?ちゃんとした」
「……」
あー、可愛い顔しちゃってさぁ。
そんな顔されたら俺も怒るに怒れねぇじゃん。
そりゃさ俺だってあわよくばの彼氏に……なんて思ってたけどな。でもこんな状況でなんてなれるかよ。
とりあえず理由だ、理由。俺は目の前で不貞腐れているに声をかける。
「顔上げろ。……どんな理由があって俺にそう言ったのか教えてくれよ」
「……」
「」
彼女はまだ不貞腐れたまま下を向いている。俺は溜息を付いて彼女の頭を撫でた。
「、怒らねぇから言ってろよ」
「……本当に怒りませんか?」
俺がそう言うとはおずおずと顔を上げそう聞いてくる。
「おう、絶対に怒らねぇ。だから正直に理由話せ」
「あのですね……、彼に好きな人出来たみたいで」
「え?」
「さっき見ちゃったんですよ。彼が後輩に告白されてOKしてるの」
俺は愕然とした。彼女にかけるべき言葉も見当たらない。
そんな俺に彼女は苦笑いを浮かべて「……だからブン太先輩、彼氏になって下さい」と言った。
「理由はわかったけどよ。どうして俺がの彼氏になる必要があるんだ?」
「今私に彼と同じように恋人が出来たらきっと彼、私ときっぱり別れるだろうから」
「それお前が傷付くだけだろぃ!」
の言葉に俺はガタッ!と音を立てて立ち上がった。それに驚いた彼女は目を丸くして聞いてくる。
「何で先輩が怒るんですか?……そりぁ傷付かない、なんて言ったら嘘になりますけど。でも今のまま終わりを告げられるの待ってる方がよっぽど辛いんです」
「……」
彼女の辛そうな顔を見てるとこっちの方が耐えられなくなってくる。俺は座り直して彼女の髪をそっと撫でる。
「なぁ、俺なんかでいいのか?」
「何言ってるんですか。ブン太先輩かっこいいですもん。……先輩じゃなかったらきっと頼まなかったかもしれません」
「。……なぁ俺この一線超えたらもう戻れないと思うんだけどそれでもいいか?」
「え?」
その一言に彼女はきょとんとした顔で俺を見つめた。
もう可愛すぎる。
本当に今すぐ抱きしめたい。あー、俺ってバカだろぃ。
だっては……だって、だって……は同じテニス部の大事な後輩である“赤也の彼女”だから。
「俺さ、ずっと前から――赤也がお前のこと好きになるよりもずっと前から、のこと好きだった」
「……せん、ぱい」
「がまだアイツを好きだったとしてもそれでもいい。その場しのぎの彼氏でも構わねぇ。だけど、俺の気持ちだけは忘れないで欲しい」
俺のその言葉に目の前にいるは今にも泣きそうな顔をしてる。まぁ、こいつの性格考えたら無理もないか。
彼女の顎をクイっと持ち上げ俺はニヤッと笑い言葉を口にする。
「そんな顔してると……キスするぞ?」
「え、ちょっ、?!」
「嘘だよ。そんなに焦らなくてもいいだろぃ」
「あ……すみません」
そんな彼女に俺は立ち上がり手を差し伸べた。
「ほら、赤也のとこ行くぜ。」
「ブン太先輩……。ありがとうございます……それとすみません、気付けなくて。たくさん傷付けましたよね」
「謝んな。俺が好きでやったことなんだしよ」
「……はい」
は俺の手を取り立ち上がる。
そして俺達は教室を出た。
ごめん、赤也。
俺やっぱり自分の気持ちに嘘付けねぇ。お前がその気なら俺本気でアイツのこと奪うからな。
アイツにとってはその場しのぎの相手でも構わねぇ。ただ俺はアイツが好きで。
アイツが俺を必要としてくれているならそれだけでいいんだ。
その場しのぎの
'09/03