親友助ける為にあんな仕打ちを受けてあんな罰則印まで付けられて。何で彼は――翼はあんなにもまぶしい笑顔を今も昔も浮かべていられるのだろう。私はあれから未だにアイツのあの笑顔を直視することが出来ない。あの表情を見ると何も出来なかった過去の自分が、彼に何もしてあげられない現在の自分が虚しさを増すだけだから。
アイツが――美咲があの日以来俺の笑うのを見る度に顔を歪めて泣きそうな表情をすることを大分前から知っていた。その理由が俺と彼女自身にあることも知っていた。でも俺は笑うことをやめなかった、彼女の前でさえも。無理して笑うことなんかしなければ彼女を救えるのに、それをしないのは何も解決出来なかったせめてもの償いのつもりだから。
大切な者を守るための代償。
形は違えどお互いに傷を背負い隠し続けた。それが大切な者を傷付けると知らずに。
「……つば、さ」
「美咲。……本当にいいのか?」
「……うん」
何が正しい恋愛かなんて知らない。私達はあの日から大切な何かを無くしたままだから。でもこれがただの傷の舐め合いだってことくらいはわかっているんだ。
俺達は何にも変えることの出来ない大切な親友だ。今それが音を立てて崩れていく。大切な何かを失う恐怖を知っているのに俺達はまだ大切なものを失い続けようとする。
「……『好き』も『愛してる』も言わないで。翼がいるだけでいい」
「……美咲。ありがとう、それからごめん」
「謝るな」
「あぁ」
君と僕の代償
(君を失うほど怖いと思うことはない)