Ruka×Hotaru #01


「今井」
「……流架、くん?」

驚いた。彼がこんな場所にいるなんて。
自分がここへ呼ばれたことは放送がかかってたから知っていたとしてもわざわざ足を運んで来るなんて思いもしなかった。

「何で貴方がこんな所にいるの?」
「何でだと思う?」
「わからないから聞いてるんじゃない」
「……心配なんだよ、今井のことが」
「!?……心配してくれるのは嬉しいけど、残念ながら貴方の心配しているようなことは何もないから安心しなさい」

私はそのまま彼の前を通り過ぎようと思った。が、彼の「嘘だろ」と言う言葉に足を止めた。
――いや、止めざるを得なかった。私は仕方なく振り返り彼に「……何でそう思うのかしら?」と問う。

「今井だから。……今井はいつも辛いことあっても自分の中に隠すから」
「……そんなことないわよ」
「嘘。……ねぇ、今井。何でそうやって嘘付いて、意地張るの?」
「嘘も付いてないし、意地も張ってるつもりもないんだけど」
「どうして俺の前でまで強がるの?……俺はもう大切な人が自分の前で傷付くのを見たくないんだよ」

流架くんがそう言って私の腕を引っ張るから私は必然的に彼に抱きしめられる体制になる。
そのことに驚いた私はその腕から逃げようと身を捩るが彼も男の子だから見た目によらず強い力で抵抗する私を抱きしめてくる。

「……何で流架くんにはわかっちゃうのかしら?」
「今井のこと見てるからね」
「アンタは蜜柑だけを見てればいいのに……」
「自分の前で傷付いていく人を俺はもう見たくないんだ。……棗だけじゃなく佐倉や今井まで傷付くのは嫌だから」
「……馬鹿ね」

今だけは彼の胸を借りて……少しだけ彼に自分の弱さを見せてもいいかなと思った。



強がりなのことだから
(もう強がらないで……俺は君の傍にいるから)